ウチのお雑煮 おたくのお雑煮

お正月のご馳走といえば、お雑煮。素材やスタイルは違えども、日本列島津々浦々で、同じ「お雑煮」の名で呼ばれるものを一斉に食すわけです。
ただ、おそらくは、ご実家やご結婚相手のお家で受け継がれてきた、というお雑煮を召し上がっている方が大多数だと想定されますので、隣家のお雑煮の中身さえよく知らないのが実情ではないでしょうか。ましてや、よその地方のお雑煮、気になりますよね。
そうした声は案外多いようで、「くらしのこよみ」編集統括・田中宏和の報告によれば、京都のデパートで、写真入りの「47都道府県お雑煮地図」なるものが配布されていたとか。また、沖縄では、お正月にお雑煮をいただく習慣に馴染みがない、という新聞記事を先日読みました。雑煮の代わりというわけではないでしょうが、お正月には豚の腸を使った「中身汁」などが食されるのだとか。これもまた、伝統的な食習慣が保たれているひとつの姿ですね。

さて、「くらしのこよみ友の会」研究員は、2020年新春、どのようなお雑煮を召し上がったのでしょうか? 皆さまの投稿をもとに、まとめてみます。

奥様お好みの白味噌ベース

私の親は岡山出身、結婚後大阪府羽曳野市在住ですが、お雑煮といえば小さい時からおすましでした。確か、蒲鉾、ほうれん草、大根、人参、ブリor鶏肉、三つ葉? 餅は丸餅。妻のウチでは、元旦は白味噌、2日目おすまし、3日目おこのみ、同じく丸餅。妻が白味噌ベースのお雑煮が大好きなので、最近はほぼ白味噌雑煮消化なお正月です。里芋、人参、鶏肉、丸餅、ちょこっといくら付。ほとんど隠れて見えませんが具材少なくなったら筑前煮を。

こがっぱ

「正月菜」を愛でる美濃地方

ぐっとシンプルな美濃地方のお雑煮です。年末になると普段の小松菜の袋が、正月菜、もち菜と名前が変わります。子供の頃は今のように成長した小松菜ではなく、根引きの5.6センチぐらいの大きさだったと思います。母は小さい方が上等と言っていたような気がします。

さくらちゃん

海苔が決め手の「出雲風」

出雲風お雑煮(もどき)です。実家は房総ですが、両親が出雲の出身なので、ウチのお雑煮は出雲風。すまし汁に海苔です。本当は「かもじのり」別名「十六島海苔(うっぷるいのり)」が入るのですが、いただいてくるのを忘れてしまい、刻み海苔で代用。

三澤純子

薩摩名物がメインのオリジナル

主人の故郷の鹿児島・宮崎に近いエリアのお雑煮は、鹿児島市の由緒正しい「さつま雑煮」(松をくべて海老を炙り、鰹節・昆布と共に海老でダシをとる)とは随分と違います。主人の家族の好物という事もありますが、なんと!メインは「さつまあげ」のお雑煮です。ダシは鹿児島名産の鰹節や鶏肉をベースに、「さつまあげ」「豆もやし」が澄まし汁に入っています。82歳義母がついたお餅とさつまあげの相性がバッチリとは!

みうきい

千切りの根菜たっぷりでほっこりと

宮城県北部の登米市では、とにかく大根と人参の千切りが大量にはいります。椎茸も高野豆腐もかまぼこも千切りです。本当は大根と人参の千切りを茹でて、外に干して一度凍らせたものを入るのですが、なかなかそこまでできず、です。お好みでいくらをのせたりします。

美穂

甘辛両党で楽しむお正月

夫が新潟(母方は京都)、私が秋田で、全く異なるので、2種類用意しました。初めに新潟。角餅に小豆です。なぜかは分からないそうです。新潟の一般的なお雑煮とは異なるようです。そして、秋田。しょうゆベースのおつゆに、角餅でごぼう、大根、人参、椎茸、三つ葉を添えて。本来なら鶏肉も入るようですが、実家では入っておりませんでした。実家は、元々県南の出身なのですが、これが一般的なものなのか調べきれておりません。

まゆこ

家長が仕切るシンプル芋雑煮

実家(千葉県中央部)のお雑煮は鰹節出汁のしょうゆベースで具は里芋のみ。お好みでノリを入れます。シンプル!いも正月の名残でしょうかねぇ……。尚、お雑煮作りは家長の仕事です。

かずさ

これぞ京都のお正月

白味噌の煮た丸もち、祝い大根に頭芋に菜の花。

田中宏和

柚子香る土鍋仕立て

簡単なお雑煮を作りました。菜の花、ぶなしめじ、柚子の皮を少々……。見た目が寂しいので、柚子の中身をくり抜いて土鍋に浮かべておきました。

Yukiko

「何も足せない、何も引けない」

地元名古屋のお雑煮です。鰹節でだしをとり、醤油とみりんで味付け。餅は角餅で、具はもち菜のみ。シンプルの理由は、家康公時代から続く地域の倹約気質の表れだとする説など、諸説あり。正月、飲みすぎたり食べすぎたりした翌朝などでも、するっと食べられます。何も足せない、何も引けないお雑煮です。

まつなみ

……なるほど、なるほど。

土地の気候風土に根差した素材、家々の歴史を偲ばせる味つけ、さらに代々のつくり手がお好みや時代に応じたアレンジを少しずつ加えて、現在の各家のお雑煮があるのだということがよくわかりました。そして、その多彩なこと。
「土地×歴史×好み=ウチの雑煮」の方程式、答えは家族の数だけあるということですね。
そんなことを実感しつつ、田中宏和の投稿からひとこと引用して締めたいと思います。

「都道府県というメッシュも粗いんだろうと思うのです。市区町村や地区レベルでも違うでしょうし、家ごとにも違ったりする。お正月の迎え方、過ごし方は千差万別だけれども、あらゆる人が平等に大晦日を迎え、元旦を迎えるところに、行事の面白さがあるのだなと感じ入っております。
何はともあれ「違いがわかる」は大事だなと思うわけです。
くらしのこよみ友の会では、微細な差異への感性の解像度を高めていきたい、それら差異への表現を磨いていきたい、と考えております。」

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