うつくしいくらしかた考

お正月が失われる?Well-beingと年中行事の関係性とは

2022年12月23日

ライフスタイルが変化する中でも「自然に寄り添う」きっかけとなり、Well-being の向上、
ひいては「うつくしいくらしかた」につながる可能性のある日本の文化の『年中行事』について調べることにしました。

日本には五節句はじめとするさまざまな年中行事がありますが、これらは季節の移ろいに合わせ、
人間と自然が対話し、その時々の自然の力を生活に取り入れる形で、各様式が地域や家庭で受け継がれ発展してきました。
こうした年中行事が今どれくらい知られ、実施され、継承されようとしているのか。生活者の意識、実態をレポートします。

【調査概要】
・調査目的:うつくしいくらしいかた、丁寧な暮らし方に関する実態・意識を明らかにする
・調査対象:全国の20歳~79歳 男女600サンプル
・調査方法:インターネット調査
・調査時期:2021年12月3日~6日

【調査結果トピックス】

◎年代差のある行事の認知。20代では14%が「正月」を知らない!?

五節句を含む18の行事の認知についてたずねると、最も知られているのは「正月」で92.0%、続いて「大みそか」が91.3%、「節分」「お盆」の90.5%となりました。年代別に見てみると、全体的に若年層での認知率が低く、20代の14%が「正月を知らない」という結果になりました。

また、年代差が顕著な行事として、「小正月」「桃の節句」「八十八夜」「端午の節句」「正月事始め」があり、70代と20代では30%以上もの差が見られました。子どもの頃、多くの人が親しんだことがあるであろう「桃の節句」「端午の節句」は、20代ではそれぞれ57.0%、50.0%の認知にとどまりました。「ひなまつり」「こどもの日」と聞けばイメージがわいたのかもしれませんが、「節句」としての行事認知が低いことが伺えます。

五節句の一つでもある「重陽の節句」については、認知率が全体でも17.3%となり、他にも「夏越(なごし)の大祓(おおはらえ)」「八朔(はっさく)」「卯月八日(うづきようか)」が2割以下の認知率になるなど、ほとんど知られていない行事もありました。

お正月といえば30年ほど前は金融機関だけでなく、商店も閉店し、大みそかはあわただしくも静かに新しい年を迎える風習があり、40代以上では当たり前に認知されている「正月」。現代では多くの商店やさまざまな機関も営業していて、20代やZ世代にとっては「正月」も日常と変わらなくなり、行事の認識が薄れつつあるのかもしれません。

◎「正月」でも実践度は約5割。フルタイムワーカーには実践が厳しい現実。

「正月」にはおせち料理に鏡餅、門松やしめ飾り、「小正月」には小豆がゆや餅花など、行事にはその時々に自然から得られるものを工夫して作った食事や飾り付けがあります。そのような行事食や飾り付けは、どの程度実践されているのかたずねたところ、行事食と飾り付けの両者において最も実践度が高いのは「正月」で行事食51.8%、飾り付け38.8%となりました。“行事食”の実践度が次に高いのは「大みそか」で38.3%、“飾り付け”においては「お盆」が13.2%と、いずれも「正月」の実践率とは大きく離れた結果となり、認知の高い行事でも、実践されていない習わしが多いことがわかりました。

また、年代別に見てみると、認知と同様、全体的に中・高年層より若年層の方が低い実践率となりました。職業別に見ると、専業主婦(主夫)、パートタイムでの実践率が高く、フルタイムワーカーは、それら職業に比べ低い結果となっています。家に関われる時間の長さが行事の実践に大きく影響していると考えられます。コロナ禍により在宅勤務をする人が増えることで、行事の実践にもつながるかもしれません。家族の形態や働き方が変わっていく中で、どのような形で生活に行事を取り入れられるのか、考えていく必要がありそうです。

◎継承意向は「正月」でも約4割。年中行事は継承し続けられるのか!?

続いて、各行事について「大事にして後世に受け継ぎたいと思う」かどうか、継承意向をたずねました。実践度が最も高い「正月」の継承意向が最も高くなりましたが、40.7%と過半数に満たない結果でした。

年代別では、30代が最も低く30.0%、続いて20代の36.0%となり、若年層での継承意向が低いことがわかります。職業別では、最も実践率の高かった専業主婦(主夫)での継承意向は55.7%と、他の職業と比較して高いですが、それでも過半数を少し超えた程度の数値となりました。

◎実践度が高いと幸福度も高い。年中行事でWell-being向上へ

最後に、幸福度と年中行事の実践の関係について触れてみましょう。

最も実践度が高かった正月を例にとって見てみると、正月の行事食を実践する人は実践していない人よりも幸福度が17.9%高いことがわかりました。飾り付けの実践や、他の行事でも同様の傾向が見られており、年中行事を実践している人は、そうでない人より幸福度が高いといえます。ある程度、心に余裕のある人が行事を楽しんでいるのだと容易に推測されます。

一方、行事を実践することが幸福度を高めている可能性も考えられます。実際、私たちうつくしいくらしかた研究所が行っていた年中行事を楽しむイベントでも、参加者からは、「普段は忙しくて行事を実践することなく過ごしていたが、改めて行事を知り実践することで気持ちが穏やかになった」といった声が聞かれ、みなさんが笑顔で帰路につかれたことが印象的です。

年中行事は、私たちの生活を整える節目ともいえます。忙しい毎日の中でも、ふと立ち止まって自然に向き合うことで私たちの健やかな生活もつくられていくのではないでしょうか。

今回の調査結果から、年中行事は認知されていても、生活者全体の約半数(行事によっては半数以下)しか実践されておらず、フルタイムワーカーの共働きの家庭が増える中、年中行事が継承されずに廃れていってしまう危険性があることがわかりました。一方で、忙しい中でも実践をすることで、幸福感が高まる可能性も見いだせ、年中行事を実践する大切さにも光をあてていく価値があることがうかがえます。

「正月」のおせち料理、正月飾りには、一つ一つ意味があり願いが込められています。ただそれらは、単純な願掛けではなく、先人たちがその土地でその時の旬の食材や植物に向き合い、それらが持つ力を見いだし、自分たちの生活に取り入れる知恵や工夫を重ねて受け継がれてきたものです。

その自然に向かう姿勢、それらを生活に取り入れる工夫は、自分の生活を整えるのみならず、サステナブルな社会を構築していくうえでも大切なことであり、受け継いでいかなければならないものではないでしょうか。

年中行事はその家々のスタイルに合わせて様式や形を変えても、実践することで年中行事の意味を知り、楽しさを味わうことで後世に伝えていけるものだと思います。
このまま年中行事が廃れていくのを傍観するのか、あるいは、長年継承されてきた行事の中に潜む現代的な価値を見いだすのか。年中行事のイベントから笑顔で帰られた参加者を目の当たりにしてきた私たちは、後者に取り組むことに可能性を感じています。

家族の形が変わり、コロナ禍で新しいライフスタイルも生まれている今、これからの時代にもフィットする年中行事のあり方を提案していきたいと思います。

年中行事イベントの様子

 

「うつくしいくらしかた」が導く自然に向き合うWellbeing

2022年6月1日

世界的なパンデミックを経験し、私たちのライフスタイルは、この1、2年で大きく変化しました。そのような中で、より現代の生活者に合った「うつくしいくらしかた」を提案していくために、我々うつくしいくらしかた研究所では、今日の生活にある「うつくしいくらしかた」の実態はどうなっているのかを調べることにしました。

「うつくしいくらしかた」のとらえ方はさまざまありますが、実際に「うつくしいくらしかた」に対してどのようなことをイメージするか、自由想起のアンケートをとったところ、「丁寧に暮らす」「自然を感じる(配慮する)」「シンプル」という3つの大きなキーワードでくくることができました。。

そこで今回の調査では、「うつくしいくらしかた」の構成要素の1つである「丁寧な暮らし方」について、生活者の意識や実態、受容性などを調査してみました。

 その結果、丁寧な暮らしをしている人は、していない人よりも、「今、とても幸せ」だと思う割合が約3倍も高いことがわかり、「丁寧な暮らし」をすることで、より豊かな暮らしへと昇華していることがうかがえます。
そのような人たちの暮らし方をみてみると、モノを長く使用し、季節を楽しむことを心がけたり、電化製品に頼りすぎない生活を送るなど、昨今社会で注目をされているような環境に配慮した生活を送っています。
しかし、それらをする理由としては、あえて「環境に配慮した生活」を意識しているのではなく、「穏やかな気持ちになるから」など、自分のために自ら進んでそのようなライフスタイルを選んでいることがわかりました。

半世紀前は多くの時間が費やされていた家事仕事が、電化製品などの普及により簡便になった一方で、それらに頼らず手間をかけることが楽しさや豊かさを提供しているのかもしれません。

 

 

【調査概要】
・調査目的:うつくしいくらしいかた、丁寧な暮らし方に関する実態・意識を明らかにする
・調査対象:全国の20歳~79歳 男女600サンプル
・調査方法:インターネット調査
・調査時期:2021年12月3日~6日

 

【調査結果トピックス】

◎「丁寧な暮らし」への関心層は半数以上

まず、「丁寧な暮らし」に対する意識・認識についてたずねると、「実践していると思っている人」は34.8%となり、3人に1人は丁寧な暮らしをしている認識があるようです。さらに残りの「実践している認識はない」と回答した65.2%のうち「丁寧な暮らしを心がけたいと思っている人」は30.9%で全体の20.2%にあたります。丁寧な暮らしの実践者と意向者を合わせると全体の半数を超える結果となり、「丁寧な暮らし」への高い関心があることがわかりました。

「丁寧な暮らしを実践していると思っている人」はどのような人なのでしょうか。ここからは、その特徴をみていきます。


◎「丁寧な暮らしを実践している人」はモノを長く使用し、季節を楽しむライフスタイルの傾向

普段の生活意識や価値観をたずねると、「丁寧な暮らしを実践している」人では、「自分に合う良いと思ったものを長く使いたい」(90.9%)「日本の季節や自然の移ろいを楽しみたい」(86.1%)などの意識が高いことがわかりました。実際に旬を意識した食材購入や季節の花を楽しんでいる割合なども高くなっており、日々の生活の中で季節を楽しんでいる様子がうかがえます。

 


◎「うちわ・扇子」「やかん」「ほうき」など電化製品に頼らない生活も

家庭における生活道具の使用状況についてたずねると、「丁寧な暮らしを実践している」人は掃除機や炊飯器などの電化製品は使用しつつも、「うちわ・扇子」(81.8%)「やかん」「ほうき」(75.6%)などの利用率も高くなっています。便利なものに頼りすぎず、手間暇をかけ、環境にも配慮された生活を送っていることがうかがえます。

 


◎「丁寧な暮らし」は、穏やかで幸せな日々をもたらす

「丁寧な暮らしを実践している人」に、実践理由を聞いてみたところ、「穏やかな気持ちになるから」が64.6%で最も高く、「暮らしやすくなる」「豊かな人生になる」と続き、日々の精神的な効用をもとめて「丁寧な暮らし」を実践していることがわかりました。

特筆すべきは、「丁寧な暮らし」は、昨今注目されている「環境に配慮した暮らし」ではあるものの、「地球環境に良いから」という理由は28.7%にとどまっているという点です。環境問題を意識して「丁寧な暮らし」をしているというよりも、自然体で自らのために進んで「丁寧な暮らし」をしていることが、結果的に環境にも配慮することになっているといえそうです。


また、「丁寧な暮らしを実践している人」の幸福度(「今、とても幸せだと思う」「比較的幸せなほうだと思う」の合計)は77.0%と高く、トップボックスの「今、とても幸せ」の割合は、実践している人では18.7%、していない人では6.4%と、約3倍の差がありました。「丁寧な暮らし」をすることが、精神的により豊かで幸せな暮らしにつながっている可能性がうかがえます。


◎20~30代女性には、具体的な“暮らしかた”の提案が効果的?!

最後に、性別・年代による特徴をみてみましょう。
「丁寧な暮らしを心掛けたいと思っている人」(「とてもそう思う」「ややそう思う」の合計)は女性の20代で46.0%、30代では44.0%となっており、全体の52.8%に比べてやや低い結果になりました。
一方で、女性20代・30代では、今は実践できないが、やってみたいこととして、「季節の花を買ってきて飾る」「家庭菜園で料理に使うハーブや薬草を育てる」「ドレッシングを手作りする」「風鈴で涼む」という項目が、他世代よりも高い傾向にありました。この世代の人たちは、「丁寧な暮らし」という漠然としたイメージでは反応しないけれども、具体的な“生活文化”や“暮らしかた”を提案していくことで、興味をもち行動につながるのかもしれません。

今回の調査結果全体からみえてきたポイントとして、昨今、社会ではサステナブルな暮らしやWell-beingの向上が求められていますが、無理のない範囲で楽しくできる「丁寧な暮らし」が、社会課題の解決に寄与する可能性があることがうかがえました。サステナブルな暮らしの必要性だけでなく、無理なく楽しめる「丁寧な暮らし」をできることから始めたり、学んだりする機会を提供していくことが求められているのではないでしょうか。


次回は、その「丁寧な暮らし」のきっかけともなりうる年中行事の実態についてレポートします。季節の移ろいに合わせ、人間と自然が対話し、その様式が地域や家庭で受け継がれ発展してきた年中行事。今どの程度の人が実践しているのかを調査をもとにお伝えしていきます。

 

 

ページの先頭へ